意識してやると、どうしても固くなってしまう——。
自然体でいようとすると、普段の自分が出てしまう——。
3月第2週のキャリアカウンセリング実践勉強会では、少人数グループに分かれてのロールプレイ練習を行いました。各グループから共有された振り返りの中で、多くのメンバーが口にしたのが、この意識と自然体の間で揺れる感覚でした。
傾聴の関わりを実践する中で、誰もが一度は感じるこのジレンマ。今回の勉強会では、この固さにどう向き合っていけばいいのか、学びのプロセスとは何なのかについて、深い気づきが得られる時間となりました。
▼4つのグループ、それぞれの学び
この日は4つの少人数グループに分かれ、それぞれがキャリアコンサルタント役・クライエント役・オブザーバー役を交代しながら、実践練習を重ねました。
・ルーム1では、問題把握をテーマに2ターンの練習が行われました。
なかなか問題の把握まで辿り着けなかったという振り返りがある一方、2ターン目ではゆったりとしたカウンセリングができたという報告もありました。ある参加者からは、キャリアコンサルタントも人間であり、自分自身の心の余裕がないとなかなか人の話をゆっくり聞けないという実感のこもった気づきが共有されました。また、クライエント役を務めたメンバーからは、話しながら自分が本当は何を相談したかったのかわからなくなる体験を通じて、クライエントの心情を理解する貴重な機会になったという声もありました。
・ルーム2では、キャリコン役を担当したメンバーが自身の癖や習性に気づく機会となりました。
話を聞いているつもりが、いつの間にか誘導してしまう、クライエントが話したいことが出てきているのに違う方向に進んでしまうという自身のパターンに改めて気づけたことが報告されました。オブザーバーからは、クライエント視点の問題とキャリコン視点の問題の違いが、見ていてもなかなか分かりづらいという指摘があり、カウンセリング中にそれらを見つけていくことの難しさが共有されました。一方、クライエント役からは、丁寧に聞いてもらえたことで自分自身を振り返り内省でき、話すことで気持ちの整理がついたという前向きなフィードバックもありました。
・ルーム3でも2ターンの練習が行われ、問題把握をしっかり掴みたいという課題に取り組みました。
ある参加者は、自然体でやろうとすると普段通りの関わりになってしまい、途中から意識が途切れて普通のやりとりに変わってしまったことに気づいたと振り返りました。代表からは、途中までは意識してできていたものの、中盤以降で踏ん張りきれなかったという具体的なフィードバックがありました。また別のケースでは、クライエントが口にした「一般的にはどうなんだろう」というキーワードから、その奥にある感情をもう一歩深く踏み込めなかったという反省が共有されました。代表からは、一般的によくある悩みという表面的な問題に行きがちになるのではなく、本人が本当に引っかかっているものは何かを探っていくことの重要性が指摘されました。
・ルーム4では、キャリコン役を務めたメンバーが明確な意識を持って臨みました。
一挙手一投足すべてに意図を持って説明できるようにすること、そしてクライエントから絶対に逃げないこと——事柄の話になっても必ず内面に戻ってくることを意識した練習となりました。もっと切り込んでもよかったという反省もありつつ、意識的に取り組めたことが成果として報告されました。クライエント役からは、50年以上抱えているコンプレックスについて丁寧に聞いてもらえたことで、20分では解決できないものの一歩半歩進めた感覚があったという声がありました。オブザーバーからは、ロールプレイを丁寧に分解して振り返る機会の貴重さが語られ、ついつい事柄に行ってしまう自分の癖や、キャリコンらしくしようとして固い表情になってしまう自分に気づいたことが報告されました。また、キャリコン役の自然な共感表現——親しい友人が言っているかのように心に入ってくる関わり方——から大きな学びがあったことも共有されました。
▼「固さ」と「自然体」のジレンマ
各グループの振り返りを聞いた代表は、今回は各部屋の共通点を見つけることが難しかったと前置きしながらも、あるメンバーが語った自然体という言葉と、別のメンバーが普段の自分が出てしまったという反省は、相反するようで実はそういうものだと捉えています、と語りました。
意識すると固くなる。でも、自然体でいようとすると、カウンセリングではない普段の自分が出てしまう——。この矛盾するような感覚は、傾聴を学ぶ誰もが通る道なのです。
▼学びのプロセス:左手で字を書くように
代表は、この固さについて、印象的な比喩を用いて説明しました。
カウンセリングの聞き方、傾聴の関わり方というのは、右利きの人が左手で字を書くようなものだと。
私たちの多くは、日常のコミュニケーションで問題解決、効率的な会話、結論への誘導といったスキルを磨いてきました。特にビジネスで活躍している方ほど、その時間は長いでしょう。それは決して悪いことではなく、むしろ社会生活において必要なものです。しかし、カウンセリングにおける傾聴の関わりは、それとは異なるアプローチを求めます。
そうじゃない関わり方をしようとすると、どうしても固くなってしまう。固いからしんどくなって、もういいやと右手に持ち替えたら、いつもの自分に戻ってしまう——そんなプロセスを誰もが経験します。
しかし、諦めずに左手でずっと書き続けていくと、右手の良さと左手の良さがいい感じでブレンドする時期が必ずやってくる。そこに至ると、一つ殻がむけたという状態になる——これが、傾聴における学びのプロセスなのです。
▼意識から無意識へ:学習の普遍的プロセス
代表は続けて、物事を学んでいくときの普遍的なプロセスについても語りました。
新しいことにチャレンジするときには、必ず意識から入るということ。これはカウンセリングだけではなく、スポーツでも全て同じです。自転車に乗るとき、水泳を習うとき——下を見ない遠くを見る、脇はこんな角度で、体の力は抜く、といったことを意識してまず始めます。
意識してやっていくと、自然と意識しなくてもできるようになる——これが人間の学習プロセスです。
整理すると、次のような段階があります:
①意識せずにできない段階
まだスキルを知らない、あるいは知っていてもできない段階
②意識すればできる段階
問いかけよう、クライエントの感情に注目しよう、と意識すれば実践できる段階。この時期は固くなりがちです。
③意識しなくてもできる段階
自然と傾聴の関わりができるようになった段階。自分のものになったと言える状態です。
意識せずにできるようになることは可能ですが、意識することで学びのスピードが速くなる——これがキャリアカウンセリング実践研究会で毎回課題を持って取り組む理由です。意識を持って取り組んでいくことで、意識すればできるという段階に到達し、さらに時間が経つと意識しなくてもできるようになっていきます。
そういう意味では、まず意識してやろうと思ったら若干固くなるのは当然のこと。そこから反復練習を重ねていくことで、学びのプロセスは進んでいくのです。
▼「固さ」は成長の証
今回の勉強会で浮かび上がったのは、固さを恐れる必要はないということです。むしろ、固くなっているということは、新しいスキルを意識して実践しようとしている証拠であり、成長のプロセスにいるということなのです。
あるメンバーが一挙手一投足すべてに意図を持って説明できるようにしようと意識して臨んだように、最初は意識的に、丁寧に、一つひとつの応答を選んでいく。その積み重ねの先に、自然体でありながらも深く寄り添える関わりができる段階が待っているのです。
また、キャリアコンサルタント自身の心の余裕がないと、なかなか人の話をゆっくり聞けないという気づきも重要です。キャリアコンサルタント自身の内面の状態が、クライエントへの関わりに影響を与えます。だからこそ、こうした勉強会という安全な場で、自分の癖や習性に気づき、意識的に練習を重ねることが大切なのです。
▼反復練習が「自分のもの」にする
最後に代表からは、次週のYouTubeリクエスト会の案内がありました。
今日見つけられた課題を感じながら、一度YouTubeの動画タイトルだけでもいいので全て見てみてほしい。そこに答えがありそうだったら動画を見て、わからなければ質問してほしい——そんな呼びかけがありました。先着順でリクエストに答えていく形式で、オープンチャットや事務局メールなど、どんな方法でも構わないとのことです。
学びは一度では完結しません。今日の練習で感じた固さ、うまくいかなかった場面、逆にうまくいった瞬間——それらすべてが、次の学びへの入口です。
意識して実践し、振り返り、また意識して実践する。その反復の中で、少しずつ、意識しなくてもできる段階へと近づいていくのです。
あなたは今、どの段階にいますか?
そして、次に意識したいポイントは何でしょうか?
キャリアカウンセリング実践研究会は、そんな問いと向き合いながら、共に成長していく場であり続けたいと思っています。

PENSEEは、「傾聴のかかわり」を通して、全ての人々が輝いた人生を歩める社会を「創造」し、永続的に「発展」させ、将来世代へ「継承」することを理念とした一般社団法人です。
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